第十一話

後にソーソートーの一年コースに通う人たちと知り合いましたが、やはり私が短期コースを選んだことには驚かれるばかりでした。

「え~、なんで駐妻コースなんかに行ったの」

今でも私はその選択がベストだったと思っています。

私のクラスには私と同じようなタイ語留学者がもう二人おり、そのうちのひとりは女性で年齢も近かったことから親しくなりました。その女性Yちゃんはタイ語学習経験があり、クラスの開始当初から多少のタイ語日常会話が出来たので、タイ語学習に対しそれほど熱心ではない人たちとタイ語の母音の発音「アーアー、イーイー」から始めることに少し退屈そうでした。私はと言えば、日本でタイ文字の読み書きを独学でやっただけですから、発音の練習や挨拶の仕方を習うだけでも新鮮でしたし、それなりに楽しんで授業に臨んでいました。

通常、タイ語の日常会話を習う場合、発音記号を用いて学習することになります。ソーソートーの授業でも先生は発音記号で黒板に書いていきます。授業で使う教科書(現在ニランタイ語教室でも同じ教科書を使わせていただいています)は、基本的には発音記号による表記になりますが、発音練習のページはタイ文字表記もあり、また巻末にある辞書形式の索引には便利なことに発音記号とタイ文字表記が併記されています。

私がこのゆっくりと進む授業にひとり必死になって臨んでいたのは、先生の板書の写しをタイ文字で取ると決めたからです。発音記号で書かれた板書をタイ文字でノートに取るだけでも大変なうえ、先生の説明はどれも重要だと思われることばかりだったので、メモを取るのにもそれはもう大忙しでした。

確かに他の生徒、大多数の奥様たちが作る文章、やれ靴を買っただの、バッグを買っただの、ホテルでランチしただのという単純で代わり映えしない文章には多少退屈したものの、それはそれで楽しかったです。幸い授業が進むにつれ、元々それほど熱心でなかった生徒はひとり、またひとりと抜けていき、四か月短期コースの後期が始まる頃には残りたったの六人になっていました。先生のスパルタ度も徐々に増していきました。

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