第五話
初めてメル友たちに会うのを楽しみにしつつ、二度目のタイに降り立ちました。タイ人は必ず約束の時間に遅れる、と読んだ本のほとんどに書いてあったのに、メル友の女子大生Jちゃんはきっちり時間通りにドンムアン空港に来てくれていました。
「駐車場に車を停めてあるから」
と言うJちゃんに着いていくと、そこに停めてあったのはピッカピカの日本車でした。聞けば、両親が彼女のために買ってくれたばかりだということでした。
「お姉ちゃんはもっとグレードの高い車を買ってもらってずるいんだよ」
と、そのピッカピカの2000ccの日本車には少し不満そうなJちゃんなのでした。私の頭の中には、小さなクエスチョンマークが浮かんでいました。
Jちゃんが夕飯に誘ってくれ、Jちゃんの車に乗ってカオサン通りにあるタイ料理レストランに行きました。そこにはJちゃんの同級生が三人ほど来ていました。Jちゃんも友達らも皆明るく親切で、お互い拙い英語で会話をしながら楽しい時間を過ごしました。Jちゃんも色白なのですが、友達三人も揃って色白なのが印象的でした。そのタイ料理レストランの値段も、決して安いものではなかったのを覚えています。
「ユウコがいつもメールをくれるのは家のパソコンから?」
というJちゃんの質問の意図も、この時には全く分かりませんでした。
別の日に、もう一人のメル友T君とランチに行く約束をしていました。今のセントラルワールド、当時はワールドトレードセンターと呼んでいましたが、その向かいにあるビックC(スーパーマーケット)の前で待ち合わせでした。そこはT君が以前紹介してくれた、彼の父親の知人が経営しているというホテルの近くなので、またその話をされたらどうしようと若干気が重くなりながらT君を待っていると、目の前に一台のベンツが停まったのです。そして運転席から降りてきた小柄で色白な青年がT君でした。それから彼の運転するベンツに乗り(今思うと随分無謀なことをしていますね)、パッタイの有名店に行きました。
T君は優しそうな好青年でした。ひとつだけ今でも覚えているT君との会話があります。T君に、いつもは日本でどんな食事をしているのかを聞かれ、私は母が作る日本の家庭料理を食べている、と答えたんですね。そうしたらT君はこう言いました。
「ユウコのお母さんは料理をしなければいけないの? それは大変だね」
T君曰く、炊事と洗濯、掃除は家政婦の仕事だということです。彼の父親の知人が経営するというホテルの話、恐らく本当なんだろうな、とこのとき思いました。
二度目のタイも楽しい旅でしたが、初めて行ったときに感じたものとはまた違う類の違和感がありました。