第十四話

前回のコラムで東北地方出身の大学生Aちゃんの話をしました。周りの同級生たちのようにお小遣いに余裕もなく、オシャレをしたい年頃なのに市場の安い洋服すら買えないなんて可哀そうだと思いましたか? そんな健気な女の子に、日本人でお金もあるのだからご馳走くらい喜んでしてあげなよ、と思いますか? 実際そういう日本人が、タイにはたくさんいます。日本円にすれば大した額ではないのだから、人助けのつもりで…、というセリフもよく耳にします。本当にそうなのでしょうか。

確かにAちゃんは性格のいい子で、私が日本人だからたかってやろうなんて、そんな風に考えるような子ではなかったと思います。けれど、私が聞きたかったのは、お小遣いが足りないのなら何故アルバイトをしないのか、ということです。実際、Aちゃんの家庭は裕福ではなかったのでしょう。けれどバンコクで大学に通えること自体は、かなり恵まれた方だと思うのです。学校帰りや休日に同級生と街をブラブラする時間だってある。それがどうしても納得できませんでした。

タイの学生は、基本的にアルバイトをしません。学業に専念する、と言えば聞こえがいいのですが、実際の声を聞くと、時給が安いから、疲れるから、勉強が忙しくてアルバイトをする時間がないからという理由がほとんどです。時給が安いといっても、一時間で屋台ランチ一食くらいのお金が稼げるのだし、勉強が忙しいのなら何故真っ直ぐ帰宅しないのでしょう。学生時代にするアルバイトは、自分でお金を稼ぐということ以外にも、得られることはたくさんあるのに、もったいないなぁと思ってしまいます。

そしてここが大きな問題です。この大学生Aちゃん以外にもタイ人に共通して言えることがあります。それは、タイ人はすぐに他人を頼る、ということです。もちろんそうでない人だっています。けれど割合からいったら明らかに日本人より多い。何か困ったことやトラブルがあったときに、自分で解決しようと試みるよりもまず他人を頼るのです。タイ人を見ていてイライラすることがよくありました。どうしてまず自分で何とかしようとしないのだろう、といつも思っていました。それが顕著な例がお金のことでしょう。持っている人が出せばいい、足りなければ借りればいい、と安易に考える人の多いこと。親族同士が密接に関わり合って、互いに助け合いながら暮らすというのはタイの美しい文化です。けれど、誰かが助けてくれるからと、努力することを忘れ現状に甘んじるタイの人々は、いつになっても中華系タイ人のように財を築く日は来ないだろうと思うのです。それでも幸せだから構わないといえばそれまでですけれど、お金が絡んだ事件が多いのも事実です。

もちろん、私は限られた数のタイ人しか知らないので、上記のことはタイ人皆に当てはまるわけではありませんし、私個人が感じたことなので、その辺はどうぞご理解くださいね。

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